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世界にたった一つの、最高のコンビ

  • 執筆者の写真: Reiko
    Reiko
  • 5月2日
  • 読了時間: 3分

更新日:5月14日




春のはじまりを告げる風みたいに、

彼女が現れると、空気がふっと和らぐ。



わたしの妹は、そういう人だった。



子どもの頃から、誰からも好かれた。

いつも友達に囲まれて、何でもできて、よく笑う。

言ってしまえば、“人気者”という言葉そのものだった。



わたしは、その反対。



「お姉ちゃん、半径3メートル以内に来ないで」



中学生の妹にそう言われた日。

わたしは、笑って受け流したけれど、胸の奥が少しチクっとした。



たぶんあのときのわたしは、冴えなかったんだろう。

真面目で、おとなしくて、話は下手。

面白くもないし、目立ちもしない。



学校でも、わたしの隣には、

いつも誰もいなかった。



でも、そんな自分が嫌いだったかというと、

実はそうでもなかった。

妹が笑ってる姿を見るのが、ただただ嬉しかった。



両親がお土産を買ってきてくれた日、

妹が先に選んで、わたしは残りを手に取った。

本当は、妹の選んだものが欲しかった。



だけど、


「あ、これめっちゃかわいい!!!」


目を輝かせて喜ぶ妹を見ていたら、

なぜか、満たされた。



きっとわたしは、“与える喜び”を、

妹から学んでいたのかもしれない。



朝が苦手な私を、小学生の頃から容赦なく叩き起こし、グラウンドを25周、30周。



気づけばわたしの持久走は、学年で上位。

妹は笑って言った。

「はい、お姉ちゃん、努力の証明完了!」



そして今もスーパーに行けば、妹は即決女王。



「悩む時間、もったいないよ〜!これでしょ!」

「さすが妹プロ…」

わたしは、今日も笑う。



そんな妹も、悩みがないわけじゃなかった。



「ママ、わたしって…ほんとにママの子なの?」



幼い頃、母が冗談で言った「橋の下で拾った子」という言葉。

強く見える妹も、長い間ずっとそれを心の中に抱えていた。



けれど彼女は、その痛みさえも笑いに変える。

どんな過去さえも、誰かの心を癒す力に変えてしまう。



それが、妹という人だった。



夫が他界して、3年。

わたしの人生は静かに変わった。



でも、妹は変わらなかった。

いや、変わらずにいてくれた。



「お姉ちゃん、いちいち報告しなくていいから。

どんなに世界が変わっても、お姉ちゃんはお姉ちゃんでいいんだよ」



その言葉が、今のわたしをどれだけ支えているか。



妹はいつも、自分が疲れていても、

どこかボロボロでも、誰よりも早く立ち上がる。

テニスの試合には、必ず間に合わせる。

人の心にも、同じように。



わたしが迷ったときは、

言葉少なに、こう言う。



「お姉ちゃん、顔に書いてあるよ。

…こっちが正解でしょ?」



とっちらかったわたしの心を、

一瞬で片づけてくれるその手際の良さに、

思わず笑ってしまう。



妹は、わたしの“人生の整理整頓係”。



たまに思う。

もし妹がいなかったら、

わたしは、自分をどうやって愛していたんだろう。



妹は、世界を明るくするプロフェッショナル。



だけど、わたしだって、

その隣で咲いている、木陰の花。

目立たなくても、

誰かを支えられる花でありたい。



今日も。

わたしたちは、笑っている。



正反対の姉妹。

だけど、世界にたった一つの、最高のコンビ。

 
 
 

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