小説『レッド』
- Reiko
- 7月16日
- 読了時間: 3分

赤に守られ、赤に導かれて生きる物語。
子どもの頃、わたしはいつも「ピンク」が欲しかった。
妹と一緒に、おみやげを楽しみに待つわたしたち姉妹。
父や母が仕事から帰ってくるたびに持ってきてくれるのは、ピンクとレッドの2つのアイテムだった。
かわいいバッグだったり、ふわふわのワンピースだったり。
妹はいつだって真っ先に「ピンクがいい!」と叫んだ。
わたしは少しだけ残念な気持ちになりながらも、レッドのアイテムを手に取った。
だけど、妹がピンクを手にして見せた、あの無邪気な笑顔。
それを見ると、わたしも自然と笑顔になっていた。
レッドも悪くないかも。
…そんな風に、自分に言い聞かせるように。
「目立つからイヤだな…」
友達の中でひとりだけレッドの服を着て、そんな風に思ったこともあった。
でも、それでもわたしは、いつもレッドを選ばされて、そして次第に、レッドを選ぶようになった。
時が流れて、大人になったわたしは、不思議と迷ったときにはレッドを手に取るようになっていた。
「あなたにはレッドが似合う」
「レッドを着こなせるのはあなただけ」
そんなふうに言われるようになって、自分でも驚いた。
あの頃のピンクが欲しかったわたしは、もういない。
気づけば、わたしの化粧ポーチには、真っ赤なリップが並び、大切なプレゼンの日にも、真紅のスカーフを巻いていた。
母は、わたしの息子にもレッドの服をよく買ってきた。
男の子だし…と内心ちょっと心配もしたけれど、
息子は「ばぁばがくれた!」と、それはもう嬉しそうに袖を通した。
好奇心旺盛で、どこにでも走っていく息子。
小さな体で、道路の真ん中に飛び出していったこともあった。
何度、心臓が止まりそうになったことか。
けれど、そのたびに車は急ブレーキをかけて止まり、息子は無事だった。
もしかしたら、あのレッドの服が、遠くからでも一瞬で気づかせてくれたのかもしれない。
そう思ったとき、わたしはハッとした。
「わたしは、ずっとレッドに守られて生きてきたのかもしれない」
カラー診断では、わたしの「シンキングカラー」はレッド。
人間関係を築き、自己アピールする時に支えてくれる色。
マヤ暦では、わたしの潜在意識は「赤い月」。
新しい流れを生み出し、物事を極める使命を持つ色。
あぁ、なるほど。
「レッドであること」は、わたしに与えられた生き方だったのかもしれない。
エネルギッシュに、情熱的に。
恐れず、真っ直ぐに。
誰かの幸せのために、
自分を燃やすように生きる。
それがレッドの魂。
これまでのわたしは、いつも迷いがちだった。
誰かに遠慮して、引き下がってしまう自分もいた。
でももう、やめようと思う。
わたしは、レッドのように生きてみる。
それは、他の誰かになろうとすることではなく、
本来の自分を生きるということ。
ピンクが好きだったあの頃のわたしも、
レッドを選んできた今のわたしも、
どちらも愛おしいわたしの一部。
そして、これからのわたしは、
誰かの心に、
真っ赤な情熱の火を灯すような人になる。
人にはそれぞれ、「生まれながらにして似合う色」がある。
けれどその色は、服の色や口紅だけではなく、「生き方」の色なのかもしれない。
あなたの色は何色ですか?
あなたもきっと、知らず知らずのうちに、
自分の「魂の色」に守られ、導かれてきたのかもしれません。
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